ダイカスト金型の溶損速度のトライボロジーからの考察

ダイカスト(Dei Casting)は、製品形状となる金型空間に溶湯金属(主にアルミ合金)を高速で射出充填し(0.1~0.2秒)、所望の製品を得る加工方法です。その特徴として高い生産性があげられます。また金型面転写による高品位な鋳肌や充填後の増圧による内部鋳巣(金属が液体から固体になる際に空洞ができる)を潰す操作により、所望の品質の製品を得ることができます。一方、金型側からすると、溶湯金属(アルミ合金では700℃)を高速で射出することから、金型への熱衝撃や溶融流体による機械的損傷、溶湯との反応による化学的損傷を受けることになります。熱衝撃(充填時の加熱と離型材スプレー時の冷却による繰り返し熱負荷)はヒートクラック(亀甲状の亀裂)の誘発や、機械的損傷や化学的損傷による金型表面の窪み形成を誘発します。こうした金型表面損傷は製品面へ転写され、製品品質の低下となり、あるレベルをもって金型寿命となります。

溶湯の熱流体による機械的損傷について考察した事例を示します。この機械的損傷については、専用解析コードでも速度をパラメータとして評価がされていました。当然のことながら、流体の当たる角度も重要と考えられます。流体の速度や当たる角度を考慮し、さらに溶損速度の評価ができないかと考えました。文献調査を進めるうちに、流体衝撃作用による鋼材の機械的損傷の実験研究文献に当たりました。研究では、様々な鋼材種類について、衝撃水の速度と衝突角度を整理し、サイン関数でまとめた実験結果がグラフで示されてました。この実験結果について、簡単な流体力学関係式とトライボロジー分野での基礎的なPV値(P:圧力、V:速度)、さらに材料特性値(擦り取られると考え、せん断応力)を次元解析して、簡単な関係式を求めました。この関係式で使う比例乗数を実験データに合わせて、溶損速度式の提案を行いました。実際は、材料の劣化(高温による組織変化、物性変化、損傷蓄積など)複雑ですが、簡単な見通しが得られたものと考えてます。材料の劣化関数などを実験評価することでより精度を高めることができると考えてます。下図は、その考えをまとめたものです。鋳造解析コードのユーザー会で発表したもののコピーとなります。

発表後、特に反響はありませんが、機会があれば研究を継続してみたいと考えています。以上

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森本英樹技術士事務所

森本英樹技術士事務所代表。
長年アルミニウム産業に携わり、2024年に独立開業。
金属加工コンサルティング・研究開発サポート・講演講座活動など積極的に行っている。富山県在住。

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